「病院と訪問看護はなにが違うんだろう」「どんなことにギャップを感じるんだろう」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。 訪問看護は、利用者さまのご自宅に訪問してケアを行う仕事だと理解していても、実際に現場に入ると思わぬ違いに驚くことがあります。しかし、あらかじめ「こうしたギャップがある」と知っておけば、受け止め方も変わり、必要な準備もできます。 そこで今回は、訪問看護で働き始めて感じる5つのギャップについてご紹介します。 ①訪問先の家がなかなか見つからない 病院から訪問看護へ転職した方が、まず苦戦しやすいのが「訪問先への移動」です。頭の中では場所を把握していても、実際に走ると方向感覚が分からなくなることがあります。特に一軒家や昔からある住宅は、表札がない、住所が似ているなどで見つけにくく、土地勘のない地域ならなおさらです。 これは訪問看護が初めてなら誰もが一度は経験することです。だからこそ私たちの事業所では、利用者さまごとの共有ページに家や周辺の目印となる写真を掲載し、駐車・駐輪スペースも分かりやすいよう工夫しています。もし道に迷っても、地域を熟知したスタッフにすぐ電話で確認できる体制も整えています。そして何より大切なのは、「最初は迷うもの」と考え、時間に余裕を持って行動することです。慣れてくると、少しずつ頭の中に地域の地図ができてきます。最初から完璧にたどり着こうと焦らず、一つずつ経験を積んでいきましょう。②使える医療・衛生資材が限られる在宅は病院と異なり、使える医療・衛生資材が限られます。病院では当たり前だったことが、在宅ではすべて揃っているとは限りません。例えば、清拭では自宅のタオルとお湯や電子レンジで作った蒸しタオルを、洗髪ではゴミ袋とタオルを活用することもあります。点滴棒がなければハンガーで代用し、チューブやカテーテルの交換頻度、清潔操作も病院と同じようにはいきません。 病院での経験が長い方ほど、最初は「こんな環境でどうすればいいの?」と戸惑うかもしれません。しかし「今ある環境で、どうすれば安全にケアできるか」を考えることこそ、訪問看護の大切な仕事の一つです。私たちもスタッフ同士で知恵を出し合いながら、利用者さまにとってよりよい方法を日々考えています。「病院と同じようにできない」難しさがある一方で、限られた環境の中で工夫し、その人の生活に合わせたケアを考えられることは、訪問看護ならではの面白さでもあります。③主治医だけでなく、さまざまな職種との調整がある 訪問看護では主治医だけでなく、ケアマネジャーや病院の看護師、薬剤師、ヘルパーなど、さまざまな職種と連携する機会があります。特に訪問看護師はそれぞれの職種をつなぐ「橋渡し」的な存在になることも多く、他職種との調整は訪問と並んで重要な仕事です。 病院でも多職種連携はありますが、訪問看護では「外部の人との連携」が中心です。同じ職場なら情報やルールを共有しやすく、ある程度の「暗黙の了解」も成り立ちますが、訪問看護では他施設や立場が異なる相手と連携するため、より丁寧な情報共有や報告が必要です。さらに、報告するタイミングや電話対応、名刺交換など、医療従事者としての知識や技術だけではなく、社会人としての接遇やマナーも求められます。こうした部分にギャップを感じることもあるかもしれませんが、私たち自身も、それぞれの専門職の力を借りながら日々利用者さまの生活を支えています。だからこそ、この「多職種連携」は地域で利用者さまを支えるために欠かせないものなのです。 ④看護やリハビリ以外の相談事も多い訪問看護で働いていると、看護やリハビリに関する相談だけでなく、生活に関するさまざまな相談を受けることがあります。「あなたって髪切ってくれるの?」 こんな質問も実際にあります。もちろん私たちは美容師ではないため、髪を切ることはできません。しかし、「できない」で終わらせず、外出が難しい方なら訪問サービスを行う美容師を一緒に探すなど、できる方法を考えることが大切です。 ほかにも、「買い物に行きたい」「あれが食べたい」「家でお風呂に入りたい」といった相談や、ご家族から「介護が大変」「仕事があるので、昼間は一人になってしまう」といった相談を受けることもあります。 私たちは、医療従事者であると同時に、利用者さまの生活を支える「生活コーディネーター」のような役割も担っています。 病院では難しいことでも、在宅だからこそできることはたくさんあります。利用者さまの「できない」をそのままにせず、「どうしたらできるようになるか」を一緒に考える。これも、生活をみる訪問看護の大切な役割です。 ⑤制度や利用料金について理解する必要がある私たちは、単純に医師の指示のもと訪問しているわけではありません。介護保険や医療保険、場合によっては自費で訪問し、そこには必ずルールと利用料金が発生します。自分たちがどの保険制度に沿って訪問し、どのくらいの料金が発生しているのかを理解していなければ、利用者さまから相談を受けても、具体的な解決方法を提案することはできません。 例えば、前章で紹介した「家でお風呂に入りたい」という希望があれば、看護師が入浴介助という形で援助することはできますが、それには医師の指示をもらい、ケアマネジャーと連携してケアプランに盛り込む必要があります。介入する時間によって料金も異なるため、利用者さまの介護度やほかのサービスとの兼ね合いも考慮しなければなりません。 こうした制度や料金については、訪問時に利用者さまやご家族から聞かれることも多く、そのたびに「わかりません」と答えていては信頼を失いかねません。反対に制度やサービスについて理解していれば、「こんな方法があります」と提案できることが増えていきます。 だからこそ私たちの事業所では、各種e-learningの活用や勉強会などを定期的に行い、スタッフ一人ひとりが制度について理解を深められるよう努めています。まとめ病院から訪問看護へ転職すると、さまざまな違いに戸惑うことがあります。しかし、これらは訪問看護が「生活の場」に入っていく仕事だからこそ生まれるものです。最初は分からないことがあっても、周囲に相談し、工夫しながら経験を重ねることで、少しずつ訪問看護ならではの視点や面白さが身についていきます。アップルパイ訪問看護ステーション/わかちな訪問看護ステーションでは、見学・面談を随時行っています。入職前に実際の職場やスタッフの雰囲気を知っていただき、不安や疑問を解消したうえで、ぜひ私たちと一緒に訪問看護の経験を積み、利用者さまの生活を支えていきませんか?